二千年以上の歴史を刻む古都セゴビア。モルタルを一切使わず築かれた壮大なローマ水道橋は今なお堂々とそびえ立ち、ゴシック様式の大聖堂は荘厳で優雅な佇まいを見せる。そして、まるで童話の世界から抜け出してきたかのようなアルカサルが、丘の斜面に悠然と佇んでいる。一つひとつの煉瓦、一つひとつの石に、イベリア半島の悠久にして重厚な歳月が刻まれている。夕陽がゆっくりと西の彼方へ沈み、斜めから差し込む光が古都の空を照らす。月の影は静かに追いかけるように進み、やがて眩い太陽を少しずつ覆っていく。わずか約一分間の皆既食の瞬間、古都全体が、淡く静謐な茶金色の光に包まれる。通りや路地では、人々が一斉に空を見上げ、歓声を上げながら、この一瞬にして永遠ともいえる自然の奇跡を見届ける。
史跡 / 天文
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万春亭と白塔の皆既月食
六百年前、朱棣は万歳山に登り、紫禁城の万家の灯を見下ろした。三百年前、乾隆帝は白塔の下をそぞろ歩き、たなびく梵音に耳を澄まし、寒空に数羽の烏を驚き立たせた。今宵は元宵の佳節。赤い提灯が柳の梢に掛けられ、夜空はしだいに古い絹本画の地色のように染まってゆく。皆既の刻、暗紅の月の影は、まるで宮廷画師が落としていった朱砂の印のように、万春亭の琉璃瓦に幾重にも押され、さらに白塔の鎏金の火焔宝珠の塔刹にも、淡く拓されたかのように映る。