明代・永楽年間に築かれた鶏鳴驛(けいめいえき)は、かつて都の西へ向かう要路で最も賑わう中継地だった。駅馬は朝霜を踏み砕き、伝令は勅命を帯びて疾走する。八百里を急ぐ蹄の響きには、戦の烽火と帝の詔が託されていた。いま、城壁の上から見える景色は一変した。胸壁の向こうでは鉄路が遠山へと伸び、二本の列車がすれ違い、その汽笛が古き驛の静けさを破る。六百年前、万水千山は蹄の跡で測られた。だが今や、千里の道も朝に発てば夕べには至る。
史跡 / 天文
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万春亭と白塔の皆既月食
六百年前、朱棣は万歳山に登り、紫禁城の万家の灯を見下ろした。三百年前、乾隆帝は白塔の下をそぞろ歩き、たなびく梵音に耳を澄まし、寒空に数羽の烏を驚き立たせた。今宵は元宵の佳節。赤い提灯が柳の梢に掛けられ、夜空はしだいに古い絹本画の地色のように染まってゆく。皆既の刻、暗紅の月の影は、まるで宮廷画師が落としていった朱砂の印のように、万春亭の琉璃瓦に幾重にも押され、さらに白塔の鎏金の火焔宝珠の塔刹にも、淡く拓されたかのように映る。