史跡

鶏鳴驛の夜明け

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明代・永楽年間に築かれた鶏鳴驛(けいめいえき)は、かつて都の西へ向かう要路で最も賑わう中継地だった。駅馬は朝霜を踏み砕き、伝令は勅命を帯びて疾走する。八百里を急ぐ蹄の響きには、戦の烽火と帝の詔が託されていた。いま、城壁の上から見える景色は一変した。胸壁の向こうでは鉄路が遠山へと伸び、二本の列車がすれ違い、その汽笛が古き驛の静けさを破る。六百年前、万水千山は蹄の跡で測られた。だが今や、千里の道も朝に発てば夕べには至る。

史跡 / 風景

青辺口長城と榆葉梅

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晩春が終わりに近づき、初夏はまだ訪れていない。青辺口長城の崩れた城壁は、まるで時に忘れ去られた骨のように、静かに尾根に横たわっている。遠くから風が吹き、風化した煉瓦をなで、山一面に咲く榆葉梅の上を通り過ぎていく。紫がかった赤の色彩は、まだ燃えぬ炎のように、まだ消えぬ霞のように、荒寥とした大地と歴史の狭間で静かに咲いている。私はかつての道をゆっくりと歩く。足元には砕けた石と土が広がり、目の前には柔らかな花の海が広がる。かつての烽火や馬の蹄の音はすでに遠く去り、残るのは風の音と花の影だけ。春と夏の境目で、静かにささやき合っている。

史跡 / 天文

万春亭と白塔の皆既月食

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六百年前、朱棣は万歳山に登り、紫禁城の万家の灯を見下ろした。三百年前、乾隆帝は白塔の下をそぞろ歩き、たなびく梵音に耳を澄まし、寒空に数羽の烏を驚き立たせた。今宵は元宵の佳節。赤い提灯が柳の梢に掛けられ、夜空はしだいに古い絹本画の地色のように染まってゆく。皆既の刻、暗紅の月の影は、まるで宮廷画師が落としていった朱砂の印のように、万春亭の琉璃瓦に幾重にも押され、さらに白塔の鎏金の火焔宝珠の塔刹にも、淡く拓されたかのように映る。

史跡 / 天文

角楼上空の皆既月食

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夜の色は紫禁城の角楼の上にゆっくりと広がる。月輪は一寸ずつ影に収められ。銀の輝きは消え、やがて絳紅の盃となる。既食のとき、護城河も風も息をひそめる。生光に至れば、水面は再び鱗光を浮かべ、檐角は月にそっと撫でられる。月は満ち欠け、明けくれば暗し;人は悲歓離合、近くなれば遠し。角楼はなお歳月の中に立ち、世の分かち合いと離れ離れを見守り続けている。

史跡 / 天文 / 都市

北京の上の彗星

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高層ビルが林立する北京CBDは、かつて明成祖・朱棣が感嘆した定都峰と遠くから見つめ合う。長安街が両者を結び、現代と歴史の時空を超えた対話を架けている。古の万里の長城が蛇行し、星明りに照らされた荒涼たる壁は、王朝の興亡を物語る。北京の頂、東霊山は銀河の下で静かに横たわり、数えきれない変遷を見守ってきた。数万年の公転周期を持つ彗星 C/2023 A3 (Tsuchinshan-ATLAS) は、悠久の星の輝きを携えて北京をかすめ、世の中のあらゆる変遷を見守ってきた。