六百年前、朱棣は万歳山に登り、紫禁城の万家の灯を見下ろした。三百年前、乾隆帝は白塔の下をそぞろ歩き、たなびく梵音に耳を澄まし、寒空に数羽の烏を驚き立たせた。今宵は元宵の佳節。赤い提灯が柳の梢に掛けられ、夜空はしだいに古い絹本画の地色のように染まってゆく。皆既の刻、暗紅の月の影は、まるで宮廷画師が落としていった朱砂の印のように、万春亭の琉璃瓦に幾重にも押され、さらに白塔の鎏金の火焔宝珠の塔刹にも、淡く拓されたかのように映る。
旅の中で一瞬を刻む
六百年前、朱棣は万歳山に登り、紫禁城の万家の灯を見下ろした。三百年前、乾隆帝は白塔の下をそぞろ歩き、たなびく梵音に耳を澄まし、寒空に数羽の烏を驚き立たせた。今宵は元宵の佳節。赤い提灯が柳の梢に掛けられ、夜空はしだいに古い絹本画の地色のように染まってゆく。皆既の刻、暗紅の月の影は、まるで宮廷画師が落としていった朱砂の印のように、万春亭の琉璃瓦に幾重にも押され、さらに白塔の鎏金の火焔宝珠の塔刹にも、淡く拓されたかのように映る。